戦争や気候変動、疫病、都市開発――。人類が危機にさらされる時、植物や微生物もまた存在を脅かされる。ロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナの専門機関が保有する種子コレクションが攻撃に巻き込まれた。自ら危機を逃れる手段を持たない植物や微生物を守り、後世へと受け継ごうと、日本でも研究機関などが地道な取り組みを続けている。
国連食糧農業機関(FAO)によると、一連の侵攻で、ウクライナの遺伝子銀行(ジーンバンク)が管理する貴重な種子コレクションの一部が被害を受けたという。別の場所にバックアップもあるが、FAOは「依然としてコレクションや管理にあたる職員が、危険にさらされている」と警鐘を鳴らす。
ジーンバンクは1800種以上の穀物のサンプルを保存しており、世界10位の規模を誇る。FAOは現地で関係機関や専門家らと協力し、国際的な支援のための調整をしている。手始めに、ウクライナ固有の種子コレクションの長期的な保存と安全なバックアップのための計画立案や、設備のグレードアップなどに取り組む。また、支援に必要な資金を調達するため、協力者を探しているという。
https://mainichi.jp/articles/20220826/k00/00m/040/119000c